根管治療は、歯の神経や血管で構成される「歯髄(しずい)」がおさめられた根管(こんかん)をきれいに清掃する処置です。リーマーやファイルといった針のような器具を使って、歯の根の中を地道に清掃していきます。
根管治療は、歯の神経まで感染が広がった虫歯で必要となります。歯の神経は、一度感染してしまうと残すことが困難となり、抜髄(ばつずい)を行わなければなりません。歯の神経を抜いても、根管内には依然として細菌や汚染物質が残っているので、専用の器材・薬剤を用いて無菌化する必要があるのです。
保険診療の根管治療は、成功率が50%程度にとどまるとも言われています。これは根管がとても細く、暗く、複雑に曲がっているからです。しかも、根管を構成する壁は傷つきやすく、闇雲に形成や清掃をしていたら、穴を開けてしまうことさえあります。専門的には根管壁の穿孔(せんこう)と呼ばれる現象で、これが起きてしまったら歯を保存すること自体、困難となります。そのため、根管治療には精密な操作が求められるだけでなく、数ヶ月に及ぶ治療期間を要することも珍しくないのです。
根管治療の精度を上げる方法としては、「マイクロスコープ」の活用があります。歯科用顕微鏡とも呼ばれる装置で、視野を肉眼の3~30倍程度まで拡大することが可能です。その結果、精密な根管治療を実現できます。
マイクロスコープは、歯科医療用に改良された顕微鏡です。かなり大きな装置なので、驚かれる方もいらっしゃいますが、治療の精度を向上させる上で非常に有用な機器です。治療は歯科医師が顕微鏡のレンズをのぞきながら進めていきます。
歯科治療では、拡大鏡(ルーペ)を用いることもありますが、マイクロスコープほど拡大率に優れていません。視野を肉眼の20倍、30倍程度まで拡大できるのは、やはりマイクロスコープしかないといえます。また、マイクロスコープでは術野にライトを照射しながら施術したり、治療中の模様を映像に記録したり、あるいはモニタリングしながら診療を進めていくことも可能です。これはマイクロスコープならではのメリットといえるでしょう。歯科治療は基本的に何をされているのかわからないものなので、それを映像で確認できることは、患者様にとっても大きなメリットといえます。
マイクロスコープは、歯科診療のいろいろな場面で用いられるものですが、とりわけ根管治療での活用例が多いです。なぜなら、マイクロスコープの利点・長所を最大限生かせるのが歯の根の治療だからです。
根管は極めて細い構造で、肉眼で確認できるのは根管口(こんかんこう)と呼ばれる入り口の部分だけです。診療台のライトや自然光は根管内に到達しないので、標準的な根管治療では、歯科医師の勘や経験に頼った“盲目的処置”にならざるを得ません。そうなると、病変の取り残しや根管壁の損傷なども起こって当然、といっても過言ではなくなります。その点、根管の中を明るく照らし、視野を数十倍にまで拡大できるマイクロスコープなら、本来見えなかったものが見えるようになることから、根管治療の精度が格段に向上するのです。
根管治療で使用するリーマー・ファイルは針のように細い器具です。使用していく中で折れたり曲がったりすることも珍しくなく、運が悪いと根管内に破折片が残ってしまいます。従来の根管治療では、それを取り除くことが困難だったのですが、マイクロスコープを活用すれば、どこにどのような状態で残っているかを視認できるので、器具の破折片も問題なく回収できます。これまでは破折片を残したまま治療を終えなければならなかったことも多く、予後を悪くする原因のひとつでもありました。
歯科医療の先進国ともいえるアメリカでは、根管治療・歯内療法の専門医が存在しています。根管治療は、極めて専門性の高い処置なので、特別な資格を持った歯科医師が治療を担当するようになっています。そうした根管治療の専門医は、ほぼマイクロスコープを活用しています。歯科用顕微鏡というのは、根管治療においてそれくらい必要性の高い医療機器となっているのです。
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